多層基板は、現代の電子機器で非常に重要な役割を果たしています。この記事では、多層基板の基本概念、構造、製造方法とその利点について説明します。この情報は、電子技術を学ぶ学生や技術者に役立ちます。
多層基板とは、基本的に一枚の基板の上に複数の層を重ねて製造された電子回路板のことです。一般的に、2層以上の基板が多層基板に分類されます。これらの基板は、LED照明、携帯電話、パソコン、オーディオシステムなど、さまざまな製品に使用されています。
多層基板のメリットは、一枚の基板に多くの回路を搭載できるため、省スペース化や高い信頼性が実現できることです。また、高周波信号を扱う場合には、複数の層を利用して回路間の影響を低減し、通信速度や性能向上に寄与します。これらの特徴が、多層基板が広く使用されている理由です。
多層基板とは
多層基板(マルチレイヤー基板)は、通常の基板(シングルレイヤー基板)に比べて、多くの層から構成される電子部品の基板です。これにより、さまざまなデバイスにおいて高度な機能と高密度実装が実現できます。
多層基板は、主に次のような利点があります。
- 配線の集積度が高まることで、デバイスのサイズを小型化できる
- インピーダンス制御により、高速信号伝播が可能になる
- 電源とグランドの面が近くに配置されることで、電源ノイズが低減される
また、多層基板は以下のような構造から成り立っています。
- 基板コア:基板の中心部分で、銅箔と絶縁材料から構成されています。
- プリプレグ:銅箔と基板コアを接着するもので、熱硬化性樹脂を含浸したガラス繊維シートです。
- 銅箔:回路を形成するための導電部材で、エッチング技術によってパターニングされます。
多層基板は、市場で利用されている様々なデバイスにおいて、重要な役割を果たしています。例えば、スマートフォンやパソコン、医療機器、自動車などの多くの製品で利用されています。
ただし、多層基板は、シングルレイヤー基板やダブルレイヤー基板に比べて製造が複雑になり、コストが高くなるというデメリットがあります。そのため、デザインや要求仕様によっては、他の基板が適している場合もあります。
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多層基板の構造
多層基板は、一般的に電子回路内での配線接続に使用される。その構造は複雑で、次のような部分で構成されている。
コア材料
コア材料は、基板の中心を形成する部分であり、一般的にはFR-4などのガラスエポキシ樹脂が用いられる。コア材料は熱伝導性、電気伝導性、機械的強度上の特性を持つ。
プリプレグ
プリプレグは、コア材料と各層間の配線層を接着剤で接合するための薄い繊維強化樹脂シートである。プリプレグは、加熱と圧力下で融解し、隣接する層と結合することで多層基板を形成する。
基板層間の絶縁
各配線層間は、絶縁層で分離されている。絶縁層は、電気的な干渉やノイズの伝播を防ぎ、信号品質を維持するために必要である。絶縁層の厚さや選択される材料は、多層基板の性能や用途によって異なる。
以上が、多層基板の構造に関連する主要な要素である。コア材料とプリプレグ、基板層間の絶縁という3つの要素が、多層基板の基本構造を成す。このような構造は、高度な電子機器に求められる小型化や高性能化に貢献している。
多層基板の製造方法
多層基板は、複数の回路層を持つ基板で、コンパクトなサイズで高性能な電子デバイスを実現するために用いられます。本稿では、多層基板の製造方法について、以下の4つのサブセクションに分けて解説します。
積層
多層基板の製造のはじめの段階は積層です。積層では、銅箔、プリプレグ(樹脂とガラス繊維を含む未硬化の複合材料)、コア(銅箔と硬化したプリプレグからなる基板)などの材料を適切な順序で重ねていきます。積層プロセスでは以下の手順が行われます。
- 内層コアのプリバッキング: 適切なサイズにカットされたコアに銅箔が貼り付けられます。
- プリプレグの適用: プリプレグが必要な回路層の上に置かれます。
- 間の銅箔の配置: 回路層と連絡層の間に銅箔が配置されます。
- ラミネーション: 圧力と熱を加えて、積層材を一体化させます。
ドリルとプレーティング
積層が終わったら、ドリルとプレーティングの工程に移ります。この工程では、多層基板にスルーホールやブラインド・バリードバイア(BBV)が作られます。スルーホールは、基板の表面から裏面に通じる穴で、異なる層を電気的に接続します。BBVは、表裏以外の層間だけで電気的に結合する孔です。次の手順が含まれます。
- 素材の選択: 穴の作成方法(機械的、化学的)を決定します。
- ドリル: 適切なドリルで穴が開けられます。
- プレーティング: 穴に銅を付着させて、各回路層を電気的に接続します。
回路パターン加工
ドリルとプレーティングの後、回路パターン加工が行われます。この工程で、銅箔を利用して電子回路が形成されます。主に次の方法が使われます。
- 光リソグラフィ: 光を利用して、銅箔上の回路パターンを描画する方法です。
- インクジェット法: 高精細なインクジェットを使って、銅箔上に回路パターンを描画します。
仕上げ
最後の工程は仕上げです。仕上げ工程では、基板の外観を整えたり、信頼性を向上させたりします。具体的には以下のことが行われます。
- ソルダーマスクの適用: PCBに緑色のソルダーマスクを塗布して、回路を保護し、はんだ付けなどの際の誤接続を防ぎます。
- シルクスクリーンの印刷: 部品の位置や基板の情報を記載するために、白色のインクでシルクスクリーン印刷が行われます。
多層基板の特性と利点
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多層基板は、通常の基板に比べて多くの利点があります。このセクションでは、多層基板の主な特性と利点について説明します。
信頼性
多層基板は、一般的に信頼性が高いとされています。これは、各層間の接続が正確であることが保証されるためです。また、多層基板は製造プロセスが高度化しているため、品質も一貫して高いとされています。
パワー分布
多層基板は、パワー分布に優れています。これは、各層間の接続が密接であり、電流の流れが均等に分散されることができるからです。具体的には、多層基板では以下のような効果が期待できます。
- 平滑な電圧分布
- 効果的なGND平面の確保
- 電流の熱効果の緩和
ノイズ低減
多層基板は、ノイズ低減にも有効です。これは、内部層にシールド層を設けることで、外部からの電磁波の影響を低減することができるためです。さらに、多層基板では信号層と電源層を密接に配置することで、効果的にノイズを低減することができます。
多層基板の応用例
コンピュータ
多層基板は、コンピューターの電子回路で大変重要な役割を果たしています。CPU、メモリ、そして他の多くのコンポーネントが多層基板の上に搭載されています。多層基板は、高密度実装と高速信号伝送のための効率的なソリューションを提供します。また、熱の管理や電磁干渉の低減にも役立っています。
通信機器
通信機器では、多層基板は信号伝送やデータ処理の重要な役割を担っています。スマートフォンやタブレット、無線通信機器、衛星通信システムなど、多くのデバイスで多層基板が活用されています。多層基板は、次世代通信技術の実現に向けて、さらに重要な役割を果たすことが期待されています。
医療機器
医療機器の分野では、多層基板は診断や治療に必要な高度な電子機能を実現するために使用されています。たとえば、医療用画像装置や心電計、超音波検査装置など、高度かつ複雑な診断機器に多層基板が活用されています。また、植込み型医療デバイスやロボットアシスト手術システムなどの最先端技術にも多層基板が用いられており、医療技術の革新に貢献しています。
多層基板の選定要素
材料
多層基板に使用される主な材料は、FR-4、ポリイミド、アルミなどです。これらの材料は、それぞれ特性が異なり、用途によって選択が変わります。
- FR-4: 熱伝導性が低いため、一般的な電子機器でよく使用されます。
- ポリイミド: 耐熱性が高く、柔軟性があります。航空宇宙分野や高密度配線基板での利用が一般的です。
- アルミ: 高い熱伝導性を持ち、LEDなどの熱の発散が必要なアプリケーションで使用されます。
厚さ
多層基板の厚さは、機器の大きさや設計上の制約によって選択されます。一般的には、0.5mmから3.0mmの範囲で、用途に応じて選択されます。例えば、以下のような選択があります。
- 薄型機器: 0.5mm ~ 1.0mm
- 一般的な電子機器: 1.0mm ~ 1.6mm
- 大型機器: 1.6mm ~ 3.0mm
層数
多層基板の層数は、電子機器の機能と設計上の要求によって決まります。層数が増えることで配線密度が上がり、基板サイズを抑えられます。しかし、コストや導通抵抗、信号伝達品質等の影響もあり、適切な層数を選択することが重要です。以下は一般的な層数の例です。
- 2層基板: シンプルな回路で使用される。低コストで制作しやすい。
- 4層基板: 主にデジタル回路用。電源とグランド平面が確保できるため、信号品質が向上する。
- 6層基板以降: 高密度回路や高速回路で使用される。信号層と電源層、グランド層が交互に配置されることが一般的。
まとめ
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多層基板は、電子回路の設計と製造において非常に重要な役割を果たしています。そのため、この記事では以下のような点を述べました。
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多層基板は、複数の銅箔層からなる基板です。それらの銅箔層は、絶縁材料であるプリプレグ層で分離されています。
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多層基板の主な利点は、設計パッケージの小型化、電磁干渉の低減、そして高速信号伝送の向上です。
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多層基板は、高密度インターコネクト(HDI)基板や無鉛ハロゲンフリー基板など、様々な種類があります。
これらの点からも、多層基板の技術は電子機器の進化と共に、今後もさらなる発展が期待されます。